当事務所では、退去強制になってしまい、一定の期間、入国制限を受けることになってしまった外国人の方で、日本人とご結婚されているような場合に、特別に入国するための手続(「上陸特別許可手続」)をサポートしています。

昨年、この手続の一部に変更がありましたので(入管法5条の2の新設)、ご説明いたします。

先ほどのような事例の場合、あらかじめ、入国管理局への申請により、在留資格認定証明書の交付を受けなければなりません。婚姻の実態等を多くの文書で立証します。交付まで約3ヶ月かかるのが通常です。

その後、入国便等を当局に連絡の上、入国時に諸般の事情を考慮して「上陸特別許可」といわれている許可を得て入国することが可能となります。

もちろん、そもそも、上陸を拒否される理由のある外国人の方であるため、形式的となっていたとはいえ、厳重な審査が空港で待ち構えていました。

上陸拒否への異議を申し立てる形で、最終的に法務大臣の裁量で上陸(入国)を認められるという、複雑な手続になっていました。この上陸特別許可には、入国審査官、特別審理官、法務大臣と三段階の手続を経るものとなっていました。

(従来の流れ)
(1)空港カウンターで上陸申請(第6条)
(2)入国審査管が審査(第7条)→上陸拒否事由があれば、特別審理官に引き渡し
(3)特別審理官による口頭審理(第10条)→異議申立(第11条)
(4)法務大臣による裁決(第11条3項)
*なお、異議申し立てに理由がなくても「法務大臣が特別に上陸を許可すべき事情があると認めるとき」は「上陸を許可することができる」(第12条)

しかし、在留資格認定証明書の交付段階で、厳しい審査(婚姻の実態等)を受けているにもかかわらず、さらに入国時に厳重な審査を受けるという必ずしも合理的とはいえないという批判がありました。

昨年の法改正により、外国人に上陸拒否事由に該当する特定の事由がある場合であっても、法務大臣(実際には入国審査官)が相当と認めるとき、たとえば、前記のような在留資格認定証明書の交付を得ているような場合は、改めて入国審査官、特別審理官、法務大臣と三段階の手続を経て上陸特別許可を行わずに、入国審査官が相当な理由があることを認めて通知書を交付し、上陸許可の証印(シールを貼付)をできるようにすることにより、上陸手続の簡素化が図られました。

なお、通知書には、入国日を期限として、該当する上陸拒否事由だけでは、上陸拒否をしないことを通知します、ということが書かれています(下記のイメージ参照)。

再入国の場合も、同様の取扱となりました。

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この取扱いは,平成22年7月1日から実施されています。

あらかじめ、日本人の配偶者としての在留資格認定証明書の交付を受けているような場合は、空港への到着後の手続がスムーズになりました。

最近の当事務所の事例では、ほとんど、一般の入国者と同様のタイミングで、到着ロビーに出てこられています。

入国時の審査が緩和されたとはいえ、在留資格認定証明書の交付は従来通り、厳しく審査の上で行われることには変わりはありません。

結婚相手が退去強制になった、あるいは、退去強制になった外国人の方と結婚された、という日本人の方のご相談を承っております。

(新設された条文)
(上陸の拒否の特例)
第5条の2  法務大臣は、外国人について、前条第1項第4号、第5号、第7号、第9号又は第9号の2に該当する特定の事由がある場合であつても、当該外国人に第26条第1項の規定により再入国の許可を与えた場合その他の法務省令で定める場合において、相当と認めるときは、法務省令で定めるところにより、当該事由のみによっては上陸を拒否しないこととすることができる。